徹底調査! 同一アーティスト、同時複数ヒット記録の全て

Oct. 2002-May 2003 窪田 弘


はじめに

50年近くにわたる全米シングルチャート(TOP100/HOT100)の歴史の中で、以下のアーティストのみが達成した大記録を、想像してみてほしい。

<記録1> 次の6組が達成 Elvis Presley、 Pat Boone、 Beatles、 Sonny、 Ja Rule、 Ashanti
<記録2> 次の4組が達成 Elvis Presley、 Beatles、 Bee Gees、 Ashanti
<記録3> 次の5組が達成 Beatles、 Boyz II Men、 Puff Daddy、 Ja Rule、 Nelly

いずれも錚錚たる顔ぶれと思いきや、実は半分近くがつい最近出てきた連中だったりする。洋楽を結構聞いてた人でも、ここ2、3年のアメリカのヒット曲から離れてると、「あれ? こんな名前の大物がいたんだ。まだ自分が洋楽聞いてなかった頃の昔のアーティストか?」なんて誤解してしまうかも。 (実際、Sonnyは60年代後半の人。決して大物というタイプじゃないが。) で、その答は、上から「TOP40に4曲同時チャートイン」、「TOP10に3曲同時チャートイン」、「Back-to-back No.1(No.1を自分の別の曲がリレー)」という記録である。

驚くべきは、ElvisやBeatesら超大物による、10年に一度出るかどうか、中には実際、ここ2、30年出てなかったような凄い記録が、この1年だけで相次いで達成されたことだ。90年代以降の、ラッパーの曲にボーカリストや別のラッパーが客演(又は、ボーカリストの曲にラッパーが客演)するパターン、そしてそれに伴うfeaturingクレジットの一般化により、以前より、この手の記録が出やすくなったのは確かだが、上記よりハードルの低い、例えば、「2曲同時TOP10」、「3曲同時TOP40」といった現象が、アルバムチャートの初登場No.1のごとく、昨年までも日常的にでていたかというと、決してそんなことはない。ゆえに今年のこの記録ラッシュは、異常(決して悪い意味ではない)かつ、大変興味深い。

私は、以前からこの手の記録に興味があったが、丁度"旬"でもあるこの機会に、過去の記録も調べてまとめてみることにした。対象は、55年以降の全米シングルチャート(TOP100/HOT100)での、同一アーティストによる「2曲以上同時TOP10」、「3曲以上同時TOP40」を軸に、アルバムチャートや、英国や日本のチャート、プロデューサやソングライタとしての同時多発、家族や同僚との上位揃い踏み、「41位以下も含めてとにかくたくさん」というケースまで、広げていく予定である。調べると言っても、筆者は、もとのチャートのデータベースを持っているわけではなく、記憶も参考に、ある程度あたりもつけながら、手持ちのチャート本などから手作業で抽出しており、データの不備・漏れもあるかもしれないが、お気づきの点があれば、お知らせいただければありがたい。

純粋な音楽ファンの中には、こうした「記録」をメインテーマとしてまとめることに、「アーティストや曲そのものの魅力を語らず(知らず)に、表面的な数字だけでとらえるとは、何事か!」とお感じの方もいらっしゃるかもしれない。が、数多のヒットの中から思いがけず好みの曲を発見する喜びや、御贔屓アーティストのチャートアクションへの一喜一憂等々、アーティストや曲そのものの魅力なくして、ヒットチャートが成立しえないのは、私も十分理解しているし、ヒットの度合に関係なく純粋に好きな曲やアーティストも多数ある。(その辺は、このサイトの中の私の別の特集記事「HAVE YOU EVER...」をお読みいただければ、ある程度ご理解いただけるだろう。) で、単にこの記事では、そこにあまり主観を入れてないだけだ。逆に、凄い記録がきっかけで、守備範囲外のアーティストに興味を持ち、どんな音か聴いてみよう、となる場合もあるだろう。実際、ラップ系を普段殆ど聞かない私も、Ja Ruleのアルバムを何度も聴いてみたりした。(結果的には、やはりよさがわからなかったんだけど ^_^;;; ) また今回は触れないが、上位初登場や、長期チャートインといった記録を見ると、50年近い歴史の中のチャートの特性の変遷が、よく理解できたりもする。

決して音楽の本質ではないが、こうした記録も、ヒットチャートの面白さの一つとして知っていただくと共に、今まで聴いてなかった曲に触れるきっかけにもご利用いただければ、幸いである。

1. Ja Rule、Ashanti、Nelly ..... 2002年の主役たち

 まずは、この企画をまとめるきっかけとなった今年(2002年の執筆時点。以下の表現も同様。)の主役3組の活躍ぶりを、表1でご覧いただきたい。Ja Ruleが、初めて2曲同時TOP10を記録した昨年11月頭から、Nellyが粘り腰で1位に返咲いている今年の10月末まで丸1年間、見事にこの3組中心で、チャートが動いてたのが、おわかりいただけるだろう。特に1位は、2/23のJa の「Always On Time」以来、ずっとこの3組だけでまわされている。(10月に2週間だけ、新人アイドルの前代未聞の大ジャンプで間隙を突かれはしたが。) また、Ja RuleやAshantiのこれらの曲の大半(全て?)を手がけるプロデューサ、Irv Gottiも、プロデューサとしての同時多発の記録として、かなりいい線言ってると思われる。(この件は、後日別項にて。)

以下、個別に見ていこう。
まずJa Rule。4曲TOP40自体、Sonnyの65年以来、36年ぶりの大記録だが、それをまず1月に達成した後、5月にも別の組合せで再達成。彼以外に、複数の組合せでこの記録を達成したのは、ElvisとBeatlesだけである。また、3曲以上TOP40も、5通りの組合せで計25週になり、これもBeatlesと並び歴代2位タイ。(この記録は、Elvisが群をぬいている。後日別項にて。)客演含め7曲がいずれも大ヒットだから、そりゃ同時に何曲も重ならない方がおかしいんだけど。だから縦軸(同時多発)だけでなく、横軸(連続チャートイン)の方も余裕で長くつながり、昨夏の「I'm Real」のチャートイン以来、以下のように結構凄いことになってる。
HOT100 01/07/07〜02/10/26 69週(継続中)
TOP40  01/07/14〜02/10/05 65週
TOP20  01/07/28〜02/06/22 48週
TOP10 01/08/11〜02/05/18 41週
連続TOP20が途切れたのは、自分がメインの3曲めの「Down A** Chick」が、意外とふるわなかった(21位止り)せいだが、流石にこれだけ連発されると飽きられたか。尚、3曲TOP10は逃したが、3曲TOP20は、12月から2月にかけて計6週記録し、そのうち、12/15に3曲とも13位以内に集めたのが、ピークだった。ほんとの意味でのピークといえば、その時チャートインしてたのは2曲だけだったとはいえ、その2曲で1・2位を制した、しかもBack-to-back No.1を達成した3月と言えるだろう。

 次、Ashanti。彼女は、新人、しかもデビューからの3曲が全部同時にTOP10ってのが凄い(3〜4月)。大体、デビューからの3曲同時TOP40の例だって、数アーティストしかない。それが、TOP10までとなれば、前例は一つ、Beatlesだけだ。(Beatlesの場合、本格デビューの前年63年に、HOT100入りしなかった曲もあったりするのだが、便宜上、HOT100への初登場をもって、デビューという表現をさせていただいた。) ただ新人なのにすごい、という見方もある反面、実はElvisのこの記録の達成も、デビューした56年と、意外とそちらの方が多数派だったりする。(唯一、Bee Geesが、デビュー後、10年以上たっての達成。)彼女のピークも、1・2位を5週独走した4〜5月と言えるだろう。「Foolish」が強すぎて、「What's Luv?」の頭越しに1位をとってしまったため、Back-To-Back No.1はとれなかったが。また、この2曲だけで13週連続、2曲TOP10や9週連続2曲TOP3を通したのも、実は歴代最長記録である。(いろんな組合せを連ねてなら、前者はElvis、後者はBeatlesでもっと長い記録もあるが、それもまた別項にて。) 連続チャートインの方も、以下のとおり、なかなかのもの。しかも、最新ヒットの「Baby」が好調に上昇中と、更新も期待できる。
HOT100 01/12/01〜02/10/26 48週(継続中)
TOP40  01/12/01〜02/10/26 48週(継続中)
TOP20  01/12/08〜02/10/12 45週
TOP10 01/12/22〜02/07/20 31週
TOP10は、7/27に上昇中の「Down 4 U」が11位だったが、これが一気にTOP10入りしてたら、9/26(41週)まで伸びており、ちょっと惜しかった。またTOP20も、10/19に「Happy」がTOP20内で粘るか、「Baby」がさっさとTOP20入りしてたら、さらに継続されていた。尚、4〜5月程のインパクトはないが、7〜8月にもヒットが相次ぎ、4曲TOP40、5曲HOT100まで記録。7/27には4曲とも24位内に集め、これを上回る記録を持つのも、やはりBeatlesのみである。そんなこんなで、3曲以上TOP40も計23週と、前述のJaやBeatlesに肉薄してる。

最後に、Nellyだが、前2者と比べ客演が'N Syncとの1曲だけと少なく、現時点では、華々しい記録は、Back-to-back No.1と1・2位独占だけだが、それだって両方達成したのは、Beatles、Puffy、Jaに続き、4組めと凄いことである。そう、Back-to-back No.1を達成したBoyz II Menも、1・2位独占は未達だし、逆にAshanti、Elvis、Bee Geesは、1・2位独占のみで、Back-to-back No.1は未達なのだ。Bee Geesなんて、「Stayin' Alive」と「Night Fever」での1・2だから、絶対Back-to-back No.1も達成してそうだが、間に弟Andy Gibbが挟まってた。(これも、Gibb兄弟でとか、Barry Gibbの書いた曲でとなると、さらに凄い記録があり、この辺も別項にて。) また連続チャートインの方も、2月の「Girlfriend」のチャートイン以来ということで、前2者に匹敵する程ではないが、「Dilemma」が11/2付でも1位をキープしており、これで新曲がはいってくると、まだまだ伸びが期待できそう。、

尚、この3組に霞んでしまうが、UsherとP. Diddyも、今年3曲TOP40を達成しており、これも詳細は別項に譲る。両者の共演となった「I Need A Girl (part 1)」がどちらの記録にも利いてるのは言うまでもない。


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