温故知新。

このページのコンセプトを思い立った時に同時に感じた思いを、そのままコーナーのタイトルにした。
発端はこう。少し前の話になるが、6月のブレイクアウト。投票用紙の右隅の余ったスペースに、はまべが用意したアンケートで、「梅雨時に聴きたい曲」というお題があった。その時はえらい寝不足ということもあって何も思いつかなかったのだが、後からふっとニール・セダカの「Laughter In The Rain」という曲を思い出した。
たぶん、今時の20歳前後の人々で、この曲を知っている人は皆無だろう。もちろん自分が20歳の頃も、決して一般人が知ってるような曲ではなかったが、自分の周囲ではそれなりに認知度が高い曲だった。私が大学生だったのは1988年から92年。中学/高校/大学と、「80年代」をモロに体験した世代なのだ。
今でも洋楽を聴く人は決して少ないとは思わない。タワレコやHMVのにぎわい方を見れば、相当なリスナーがいることは明らかだ。しかし、よく言われるように、90年代以降はリスナーのジャンルの選り好みがはっきりしてきて、チャートを基準として絶対視する傾向が薄れ、その相対的価値もぐっと下がった。その結果、ラジオやテレビでたまたま耳にした曲や、たまたま流行ってる曲だけを聴くというリスナー層が増えた。クイーンなら何曲も知ってる。でも、別に彼らが活躍した時代の音楽をもっと聴いてみようとか、「深堀り」する方向にはなかなか興味が向かない。次の「流行」が出てきてしまって、彼らの興味を奪ってしまうからだ。
1980年代は特別な時代だった。MTVが登場し、日本の地上波TV局で放送され、チャートを掲載したFM雑誌がいくつも毎週(隔週で)発行されていた。私の高校のクラスでは少なくとも5人が「今週のBillboardチャートについて」の会話に参加することができた。単に「洋楽を聴く」というだけなら、その何倍もいた。

そんな私たちが大学生になって、入ったサークルは「全米TOP40研究会」だった。大学によって若干名前に違いがあったが、当時少なくとも東大、早稲田、慶応、明治、法政、中央、立教、上智、日大といった都内の主要大学は、どこにもそんなサークルがあった。そのテのサークルがみんなで合同の会誌発行と合同イベントを開く「14大学連合」なる組織まであり、六本木の有名ディスコを借り切って今で言うオフ会をやっていたのだから、改めて考えると凄いことだ。
たぶん他大学のサークルも似たような活動をしていたと思うが、早稲田大学全米TOP40研究会では、毎年恒例の「オールタイム投票」をやっていた。今までに自分が聴いた、すべてのシングルとアルバムが対象で、好きなものを30枚だか50枚だか投票するという鬼のような企画だ。この投票の結果がいわばサークルの顔であった。学園祭で他大学を訪れ、オールタイム投票の結果が載った会報を買ってきたりしたものだ。私の頃は、早稲田や明治、中央が傾向が似ていて、70年代ぐらいのメインストリーム・アメリカ物が中心。慶応はそこにややニューウェーブやイギリス物の色が加わり、法政は更にその色が強かった。ついでに言うと2004年に現存する同種のサークルとしてはもっとも活発と思われる東大Billboard研究会は、当時は14大学連合に参加していなかったこともあり、我々からすれば「謎の存在」だった。

話を戻して、オールタイム。
当時はインターネットなんてものもないし、パソコン普及率も非常に低かったので、その結果は手書き、あるいはワープロ打ち(パソコンのワープロソフトではなく、ワープロ専用機)で会報として、紙で配布された。いくらインターネットが情報の宝庫だと言ったって、1988年の早稲田大学全米TOP40研究会のオールタイム投票の結果は検索できないだろう。いや、誰かがやってたらごめん。ま、別にやってるならやってるで良い。ここでは、「ああ、こんなにいい曲があったよ。こういうのをみんなに聴いてもらわなきゃ」という作品を発掘するべく、当時の投票結果を紹介していこうという、まあ甚だおせっかいな企画である。

同種のランキングは世の中にたくさんある。特に英米の音楽雑誌はそういうのが好きなので、「Q」とか「SPIN」「Rolling Stone」「NME」あたりが、年中オールタイムベストシングル/アルバムランキングを発表している。しかし、ひと味違うんだな、やっぱりこれが。やっぱり日本人が選んでるわけで。しかも、当時の20歳ぐらいの若者で、決して業界人とかいうわけではなく、卒業後は大半が普通にサラリーマンやら主婦として巣立って行った、ごく普通の人々が選んだ曲。当時の絶妙の空気が、伝わるといいなあ。

2004/10/24記 しんかい



第1回 早稲田大学全米TOP40 研究会 1990年度オールタイム投票 シングル部門 100位〜81位 (2004/10/31掲載)


ロゴ画像:私が学生時代に聴いて衝撃を受けたキャプテン・ビーフハート&ヒズ・マジック・バンドに敬意を表し、「Trout Mask Replica」フォトセッションから1枚頂戴しました。


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